生徒会の恋愛事情
続々と体育館に入ってくる新入生や保護者の声を、舞台裏で聞く。
絵恋ちゃんの言う通り、あたしは緊張で落ち着いていられない。
「大丈夫、そんなに緊張しないで、2分ぐらいで終わる事だから。」
「そうですけど…でもやっぱりこういうの苦手みたいです。」
「文化祭はあんなに凄かったんだから、今回も大丈夫だよ。」
確かに、文化祭を思い出せば大した事はないが、それでも怖いものは怖い。
しかも今回は1人で立たないといけないから、余計に怖かった。
「大丈夫だよ。
沙羅ちゃんなら出来るから。」
そう言って、あたしの頭をそっと撫でる。
「沙羅ちゃんなら大丈夫。
それに僕も同じところには立てないけど、ここにいるから。」
そっか、自分でさっき言ったけど、あたはし1人じゃない。
生徒会の皆が、弥先輩がいてくれる。
あたし、頑張れる。
そう決意して間もなく、入学式が始まった。
リハーサル通りに進む式は、練習と準備の賜物だった。
そしてその時がやってくる。
「では次に、生徒会会長による、皆様へのご挨拶です。」
あたしは弥先輩の顔を見上げる。
弥先輩は頷いた。
「いってらっしゃい。」
「行ってきます!」