生徒会の恋愛事情
…テレビで見た事ある車だ。
でも、肉眼で見たのは初めてである。
「…リムジン?」
光唆が口をポカンと開けている。
あたしはその姿を見て、目の前にある高級車が本物だと確信した。
なのに…すぐにまた確信は崩れる。
「皆さん、お待たせしました。」
中から出てきたのは弥先輩で、先輩方や華羅お姉ちゃんは当然のように挨拶している。
「沙羅ちゃん、光唆君、おはようございます。」
驚きで何も出来ない1年生に、弥先輩は礼儀正しく挨拶をする。
「お、おはようございます…」
対するあたし達はとてもぎこちなくて、光唆なんか弥先輩と車を見比べている。
「…これ、弥先輩の車ですか?」
「正しく言うと、叔父の車ですかね。
僕は未成年なので、まだ車は持っていませんから。」
光唆の質問にも淡々と答える弥先輩を見ていると、あたしはおかしくなりそうになった。
我が家に車なんて高価なものはない。
あるのは自動車でなく自転車ぐらいだ。