生徒会の恋愛事情
拍手の中に現れたのは、背の高い男の人だった。
距離があるから顔ははっきりと見えない。
でも、あたしは彼から目が離せなくなった。
壇上を歩き、 マイクの前に立つ――今のところ、あたしが見た彼の行動はそれだけだ。
だが一つ一つの動作が美しく、彼から放たれるオーラは華やかさと気品で満ちている。
実際、彼が前に出ただけで体育館の雰囲気は変わったのだ。
その事実に気付いているかは分からないが、彼は一礼して、慣れた手つきでマイクの位置を調節し、話し始めた。
「今年度の生徒会会長に就任しました、神崎弥と申しま…」
だが、あたしは話を聞いていなかった。
彼に魅せられて、圧倒され、あたしの時は止まってしまった。
気付いた時には、彼の話が終わっていた。
それからすぐに入学式が終わった。
少し前まで長いと思っていた入学式が、今度は短かったように感じた。