生徒会の恋愛事情


美羅が朝から洗ってくれたトマトが落ちた。


だが、弁当箱の中に落下したのでセーフである。


「ごめん!」


「いえ…大丈夫ですけど…」


トマトなら大丈夫だ。


だが、香里奈先輩の質問内容は決して大丈夫じゃない。


「好きな人…」


「うーんと、あたしの勘違いかな?」


「…好きかはまだ分からないんですけど、気になるというか惹かれるというか…不思議だなって思う人がいます。」


「不思議な人?」


香里奈先輩が首を傾げると、あたしも一緒に傾げてしまった。


「不思議っていうのは、その人が変だとかそういうのじゃなくて…良い人なんです。
凄くかっこよくて素敵な先輩なんですけど…まだ好きではない気がするんです。
なんていうか…今までに会った事がないタイプというか…」


あたしは自分でも何を言っているか分からなくなってきた。


そして考えた。


あたしにとって、弥先輩はどんな人なんだろう。


一緒にいて安心できて、でもドキドキしちゃって、だから変に意識してしまう…今までにない温もりをくれた人。


あたしが思ってる事を言うと、香里奈先輩は一瞬黙ってしまった。


「…あたし、変な事言いましたか?」


「違うよ。
ただ、それってやっぱり好きなんじゃないのかと思って。
あと、さっきさらっと先輩って言ったなって。」


「あ…」


生徒会役員のあたしにとって、男の先輩って3人しかいなかった。



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