生徒会の恋愛事情
あたしはというと、華羅お姉ちゃんを探して廊下を走り回ってた。
職員室に向かってもう先生に話したかもしれないと思ったから、まずはそこに行ったんだけど、華羅お姉ちゃんはいなくて
次に教室の方も見に行ったんだけど、それでもいなかった。
じゃあ後は何処だろうって考えて、一度廊下で立ち止まった。
そしたら急に肩を掴まれた。
驚いて後ろを振り返ると、少々息を切らせた弥先輩がいた。
「弥先輩…」
「沙羅ちゃん?
華羅がどうしたの?」
いつもよりも速い口調、鋭い目つき、それはあたしが見た事のない弥先輩だった。
「華羅と何かあったの?」
いつもの穏やかな姿はそこにはない。
そんな弥先輩は、遠い人のように感じた。
前にお金持ちだって知った時とは違う感じの遠さに、あたしは何故か悲しくなったんだ。
「えっと…」
言葉が詰まる。
言わないといけない事は分かっている。
華羅お姉ちゃんが留学に行きたい事、その事を聖也先輩と話している途中でいなくなった事
なのに言葉が出てこない。
どころか記憶が邪魔をする。
「…沙羅ちゃん?」
弥先輩の声が優しくなった。
多分だけど、弥先輩は自分がいつもと違う事に気付いたんだと思う。
「ごめんね。
急に追いかけられたら驚くよね?」
いつもの優しい弥先輩なはずだ。
だけどやっぱり、何も言えないままだった。