知っていますか?
「あっ・・・。」
そんな私の目に入ったのはあの砂田くんが所属する野球部だった。
放課後にお邪魔したので、丁度野球部も練習の真っ最中。
「え?あ、女子校だったら野球部は珍しいか!ちょっと見に行く?」
宮下賢治のナイス提案にあたしは深く感謝した。
野球部の練習してるすぐそばまで行くあたしたち。
ちょっと待っててと残し、宮下賢治が1人の部員の元へかけて行った。
その部員は宮下賢治と少し話しをした後、あたしに気がついたように
ぺこっと頭を下げた。
あたしも慌ててお辞儀を返した。頭を上げると、宮下賢治とその部員が
あたしの元へと近づいてきた。すると宮下賢治が彼の紹介をした。
「こちら、野球部主将の砂田涼。」
驚いた。
まさか、こんな形で砂田くんの下の名前を知る事になるとは・・・。
って違う!!
あの砂田君と対面している。一瞬でも会えたらいいななんて思っていたけど、
目の前であたしの顔をじっと見ているのは紛れもなくあの砂田くんだ。
宮下賢治のナイスプレイっぷりに思わず拍手をしそうになった。
「あ。」
ただじっと見ていただけだった砂田君が急に口を開いた。
「どっかで見た事ある思ったら、電車にいる子やん。」
まさかの関西弁!!
いや違う、そこじゃない。
砂田くんはあたしを覚えていてくれたのだ。
私は驚きを隠せなかった。
「え?顔見知り?」
宮下賢治も驚いていた。
「毎朝同じ電車やねん。あ、でも最近見ぃへんかったなぁ。どうしたん?」
知ってた。あたしが最近あの電車に乗ってないって知ってた。
どうしよう。嬉しさのあまり顔が火照るのを感じた。
「せ・・・生徒会長になって、その、忙しくて・・・」
うわ。明らかにどもっちゃったよ~っ!
恥ずかしいっ。
「そっかー、賢治も忙しそうやもんなぁ。」
宮下賢治は砂田くんにそんな事ないよってほほ笑んだ。
会えた事、下の名前を知れた事、話せた事、全部が嬉しすぎて倒れそうだった。