香る風の果て


篤史が先に本心を言ったのだから、私も言ってしまってもいいんじゃない?
もう勝ち負けなんて、気にしなくても。


本心をさらけ出すとしたなら……


「会いたかった」


私たちの声がシンクロした。


ぐっと力を込めて抱き締められる。息が詰まるほどの力強さが心地よくて、篤史の腕にしがみついた。


嬉しくて、言葉が出ない。


「ちゃんと会いたいって言ってよ」


温もりの中、篤史の声に耳を傾ける。ふいに耳朶を啄ばまれて、体の芯が大きく跳ねた。


「うん、言うよ……」

「じゃあ、今言ってよ」


私が口に出すまで離さないと言わんばかりに、強く抱き締めたまま。何度も啄ばんで催促する。


「会いたかったよ」


堪らなくなって零した瞬間、唇を塞がれた。


息ができないほど長くて苦しくて。だけど、離さないでと心の中で願わずにはいられない。


できるなら、このまま篤史と一緒に。


甘く優しい香りを孕んだ風が、私たちを包み込む。火照る体を冷ますように、私たちを見守るように。





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