香る風の果て


駅前の商店街から道を逸れると神社がある。普段は寂れた商店街も神社へと続くこじんまりとした参道に屋台が並び、今日ばかりは祭りの熱気で溢れている。


商店街の街灯の灯りも、いつもより明るさを増しているように思えた。


「友紀と祭りに来るの、すごく久しぶりだよね」


嬉しそうに理央が肩を寄せてくる。


私たちが一緒に祭りを見に来たのは高校の時以来かも。中学生の頃までは神社へ出掛けて地区の神輿を眺めたり、屋台で買い物を楽しんでいた。


篤史と付き合い始めた頃、ちょうど理央にも彼氏ができた。お互いに彼氏と行くようになって、私たちは一緒に行くこともなくなっていた。


今年は理央の彼氏も仕事で出張のため、帰ってくることができないらしい。


久しぶりに理央と目にする風景は、懐かしくて新鮮に感じられる。


参道に溢れる中高生のカップルを見ると、私たちの高校生の頃と重ねてしまう。


「若いっていいよねぇ、羨ましいよ」

「私たちも少し前までは、あんな感じだったんだよね」


人波に流されて歩く鼻先を、出店の焼きそばや焼鳥、カステラ焼きなど美味しそうな匂いが掠めていく。




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