隣の席の不器用男子。
「私は三年一組、長谷川 桜子(はせがわ さくらこ)。新聞部の部長よ!」
「長い名前ですね。八文字ですか」
「そうなのよ〜、たまにこの名前言うのめんどくさくなってねぇ。でも結構気に入ってるのよ」
「綺麗な名前ですね」
「でしょでしょ?わかる〜?あなた気に入ったわ!」
「ありがとうございます」
それじゃ、と、今度こそ教室に向かおうとすると、肩をすごい力で掴まれた。
…もうホームルーム終わっちゃうよ。
これは諦めるしかないのかな。
はぁ、とため息をもらして振り返ると、彼女は泣きそうな顔をしていた。
…いや、泣きたいのはこっちの方なんですよ、ほんと。
「話を聞けって言ってるでしょ…?」
彼女を纏う空気が変わったような気がした。
泣きそうな顔から一変、その顔には少しだけ恐怖を感じた。