隣の席の不器用男子。



「…だれ」


高くも低くもない、澄んだ声が聞こえてきた。
少し、スローな声だった。

声の聞こえた方向に顔を向けると、さっきまで寝ていた彼が、目をこすっていた。

…かわいい。
男子相手にそんなことを思ったのは初めてだった。


「如月です」

「そう…僕は原田です」

「知ってます」

「そうですか…次の授業ってなんですか?」

「英語だよ」

「…チッ」


…舌打ち?
…いやちがう、きっとそれは私の気のせいだ。
そうに決まってる。


「起こさないで下さいね」

「え、授業始まるのに寝るの?」

「起こさないで下さいね」

「はい」


…なんて人だ…
授業は寝るのに頭はいいなんて…




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