アナタ専属
副社……輝一の温もりが欲しくて…半覚醒のような朧気な意識の中、与えられる温もりや輝一の熱さに翻弄された。今だけ流されろって事は、行きずりの成り行きって事でしょ?なら…求めてもいいよね?酔った振りしてていいよね?
「輝一…輝一っ」
「初音…っ」
名前を呼ばれる事が…こんなに嬉しいなんて…知らなかった。輝一に欲しがってもらえて、私が欲しがれば与えてくれて……。優しく強く抱き締められて、私は現実から目を背けるように輝一を呼び、はしたなく求め続ける。
今は私の…輝一。好きだと言えば、強い腕と言葉で返してくれる……。私だけのものにならないのはわかってる…届かないのはわかってるから…今だけ溺れて流されたままにさせて。
「輝一…きい、ちぃ…」
「初音、ここにいる…届くところに…」
汗の浮いた胸板に頬寄せれば慣れたはずの香水は、私の思考を溶かす媚薬のような香る。
「初音」
呼ばれて顔を上げれば鼻先にキスを贈られた。
俺の香水と初音のものが混ざって、甘く濃い香りが漂う。それが五感を麻痺らせて、今わかるのは初音の温もりと感触、香りとその姿のみ。
余裕ねぇな、俺…ベッド行かずにリビングの床の上で抱え上げて…なんて。でも妙に燃える…シチュエーションに関わらず自分の意志で愉しめるのが自慢だが、ヤベェ…これはマジにヤベェ!何より初音に……。
「ハマっちまったかも」
抱き上げてベッドルームへ連れてきた。とりあえずバスローブを着せて寝かせる。
「マジでヤバい…すっげ……」
ころんと寝返りを打つと、裾が危うげに捲れる。普段はストッキングや膝丈スカート、パンツルックに包まれる生足が惜しげもなく晒される。まさに脚線美…膝あたりから撫で上げる。
「んっ……き…、ち」
「…初音」
呼びすぎて定着したんだか、まだ俺の名前を呼ぶ…兄貴じゃない…俺を。
明日…っつかもう今日か…休みだし。初音を抱き込んで髪の香りを楽しみながら微睡んだ。
普段からは想像できないあどけなさで眠る副社長。少しの罪悪感は酔いに任せて記憶がない事にしてしまえばいい。
近くにいて手頃な何人かのうちの一人になるつもりはさらさらないから…。誰かとこの人を共有するなんて出来ない。
ホントなら第二秘書なんていなければいい。…私にしかわからなくて私にしか出来なくて…私がいなきゃダメになればいいのに……。
けど副社長は出来ない人間じゃない…私がいなくても出来る人だから、副社長としての地位がある。だから……。
「………」
副社長の寝顔を脳裏に刻み、私はバスルームを借りる事にした。着せられていたバスローブの下には鮮やかな鬱血痕…ありとあらゆるところに散りばめられてる。
「明日はハイネックじゃなきゃ…」
首筋にいくつか見える赤に溜息を付く。こんな風に思う女が他に何人もいるなんて…そんな事耐えられない。いずれ会社は辞めるし…会う事もなくなるから…それまでの…我慢。
「おはようございます、副社長」
ダイニングテーブルにはトーストにサラダ、オムレツとベーコン、コンソメスープが並んでいた。初音はコーヒーを淹れてキッチンから出てきたところだ。
「今出来たところです。冷めないうちに召し上がって下さい」
「…ああ」
【輝一】じゃなくて【副社長】?
「なぁ…昨日…」
「申し訳ありません、寝ぼけて副社長の寝室に潜り込んでしまったようで…」
「は?」
「目覚めたら副社長がいて、慌てて出たんですが…どこで寝ていたか記憶がなくて……」
マジ!?マジで何も覚えてねぇのか!?
「昨日、お前…」
「記憶がないままにさせて下さい…とんでもない事をしでかしていたら立ち直れそうにありません」
少し困ったように苦笑いする初音…嘘だろ?マジで欠片も覚えてねぇってのか?
「…俺との事、覚えてねぇのか?」
「っ…」
「風呂入ったなら見ただろ、躯中に俺が付けたやつ」
なかった事にしてはくれなかった…。
「記憶ねぇにしたって、気付いてくらいはいんだろ?」
「そ、れは……」
「俺が抱いて、俺が付けた。俺を【輝一】っつって何度もキスねだったろ。忘れてねぇぞ」
「っ…止めて下さいっ」
「リビングの…ほらそこに座ってお前を膝に抱えて、向かい合わせにして……」
「やめてっ!」
「思い出すまで何度だって聞かせてやる!お前がどうやって俺にねだったかも、どうやって俺に触ったかも全部っ!」
「いやっ!やめてっ!」
「初音」
「っ…」
「お前が覚えてなくたって躯が俺を覚えてる…」
「副社ちょ……」
壁まで追い詰めて腕を付く。
「俺の声を…熱を…」
「!?」
「この躯で受け止めたろ、俺を…」
ラインをなぞれば眉を寄せてぎゅっと目を瞑る。片腕に閉じこめて壁を支えにする。
「俺のモンになれよ。仕事もプライベートもこんな近くにいられんだ」
「そんな事っ……」
【考えとけよ。俺はいつでもOKだぜ?】
軽くセフレにでもしようっての?あんなにたくさん他にいるくせに…。
「初音」
「副社長…東雲と苗字で呼んで頂けませんか?」
「俺とお前の仲だろ」
「誤解を招くような発言はお控え願います。役員会が始まりますから会議し……」
「はぁ~つね~」
もうすぐ役員会議が始まるのに、まだデスクについたまま。肘を付いて私を見上げながらニヤニヤしてる。
「………」
「初音、今夜空けとけよ。邪魔なしで二人きりでゆっくりしようぜ?な?」
「お時間…」
「インペリアルスィートを押さえてルームサービスで優雅にすごしたっていいしな」
「役員会…」
「なぁ、初音?いいだろ?」
「いい加減に…」
「いいって言うまで行かねぇから…」
「毎度毎度っ…副社長が役員会に遅れるなぁっ!」
「うを!?」
「社内だろうが時間にルーズな男はあり得ないっつの!」
部屋から蹴り出して社長室のドアを閉め、中で怒鳴ってみる。
「信じらんないっ!」
副社長専用の赤い革製の手帳を閉じて、溜息を付いた。
「輝一…輝一っ」
「初音…っ」
名前を呼ばれる事が…こんなに嬉しいなんて…知らなかった。輝一に欲しがってもらえて、私が欲しがれば与えてくれて……。優しく強く抱き締められて、私は現実から目を背けるように輝一を呼び、はしたなく求め続ける。
今は私の…輝一。好きだと言えば、強い腕と言葉で返してくれる……。私だけのものにならないのはわかってる…届かないのはわかってるから…今だけ溺れて流されたままにさせて。
「輝一…きい、ちぃ…」
「初音、ここにいる…届くところに…」
汗の浮いた胸板に頬寄せれば慣れたはずの香水は、私の思考を溶かす媚薬のような香る。
「初音」
呼ばれて顔を上げれば鼻先にキスを贈られた。
俺の香水と初音のものが混ざって、甘く濃い香りが漂う。それが五感を麻痺らせて、今わかるのは初音の温もりと感触、香りとその姿のみ。
余裕ねぇな、俺…ベッド行かずにリビングの床の上で抱え上げて…なんて。でも妙に燃える…シチュエーションに関わらず自分の意志で愉しめるのが自慢だが、ヤベェ…これはマジにヤベェ!何より初音に……。
「ハマっちまったかも」
抱き上げてベッドルームへ連れてきた。とりあえずバスローブを着せて寝かせる。
「マジでヤバい…すっげ……」
ころんと寝返りを打つと、裾が危うげに捲れる。普段はストッキングや膝丈スカート、パンツルックに包まれる生足が惜しげもなく晒される。まさに脚線美…膝あたりから撫で上げる。
「んっ……き…、ち」
「…初音」
呼びすぎて定着したんだか、まだ俺の名前を呼ぶ…兄貴じゃない…俺を。
明日…っつかもう今日か…休みだし。初音を抱き込んで髪の香りを楽しみながら微睡んだ。
普段からは想像できないあどけなさで眠る副社長。少しの罪悪感は酔いに任せて記憶がない事にしてしまえばいい。
近くにいて手頃な何人かのうちの一人になるつもりはさらさらないから…。誰かとこの人を共有するなんて出来ない。
ホントなら第二秘書なんていなければいい。…私にしかわからなくて私にしか出来なくて…私がいなきゃダメになればいいのに……。
けど副社長は出来ない人間じゃない…私がいなくても出来る人だから、副社長としての地位がある。だから……。
「………」
副社長の寝顔を脳裏に刻み、私はバスルームを借りる事にした。着せられていたバスローブの下には鮮やかな鬱血痕…ありとあらゆるところに散りばめられてる。
「明日はハイネックじゃなきゃ…」
首筋にいくつか見える赤に溜息を付く。こんな風に思う女が他に何人もいるなんて…そんな事耐えられない。いずれ会社は辞めるし…会う事もなくなるから…それまでの…我慢。
「おはようございます、副社長」
ダイニングテーブルにはトーストにサラダ、オムレツとベーコン、コンソメスープが並んでいた。初音はコーヒーを淹れてキッチンから出てきたところだ。
「今出来たところです。冷めないうちに召し上がって下さい」
「…ああ」
【輝一】じゃなくて【副社長】?
「なぁ…昨日…」
「申し訳ありません、寝ぼけて副社長の寝室に潜り込んでしまったようで…」
「は?」
「目覚めたら副社長がいて、慌てて出たんですが…どこで寝ていたか記憶がなくて……」
マジ!?マジで何も覚えてねぇのか!?
「昨日、お前…」
「記憶がないままにさせて下さい…とんでもない事をしでかしていたら立ち直れそうにありません」
少し困ったように苦笑いする初音…嘘だろ?マジで欠片も覚えてねぇってのか?
「…俺との事、覚えてねぇのか?」
「っ…」
「風呂入ったなら見ただろ、躯中に俺が付けたやつ」
なかった事にしてはくれなかった…。
「記憶ねぇにしたって、気付いてくらいはいんだろ?」
「そ、れは……」
「俺が抱いて、俺が付けた。俺を【輝一】っつって何度もキスねだったろ。忘れてねぇぞ」
「っ…止めて下さいっ」
「リビングの…ほらそこに座ってお前を膝に抱えて、向かい合わせにして……」
「やめてっ!」
「思い出すまで何度だって聞かせてやる!お前がどうやって俺にねだったかも、どうやって俺に触ったかも全部っ!」
「いやっ!やめてっ!」
「初音」
「っ…」
「お前が覚えてなくたって躯が俺を覚えてる…」
「副社ちょ……」
壁まで追い詰めて腕を付く。
「俺の声を…熱を…」
「!?」
「この躯で受け止めたろ、俺を…」
ラインをなぞれば眉を寄せてぎゅっと目を瞑る。片腕に閉じこめて壁を支えにする。
「俺のモンになれよ。仕事もプライベートもこんな近くにいられんだ」
「そんな事っ……」
【考えとけよ。俺はいつでもOKだぜ?】
軽くセフレにでもしようっての?あんなにたくさん他にいるくせに…。
「初音」
「副社長…東雲と苗字で呼んで頂けませんか?」
「俺とお前の仲だろ」
「誤解を招くような発言はお控え願います。役員会が始まりますから会議し……」
「はぁ~つね~」
もうすぐ役員会議が始まるのに、まだデスクについたまま。肘を付いて私を見上げながらニヤニヤしてる。
「………」
「初音、今夜空けとけよ。邪魔なしで二人きりでゆっくりしようぜ?な?」
「お時間…」
「インペリアルスィートを押さえてルームサービスで優雅にすごしたっていいしな」
「役員会…」
「なぁ、初音?いいだろ?」
「いい加減に…」
「いいって言うまで行かねぇから…」
「毎度毎度っ…副社長が役員会に遅れるなぁっ!」
「うを!?」
「社内だろうが時間にルーズな男はあり得ないっつの!」
部屋から蹴り出して社長室のドアを閉め、中で怒鳴ってみる。
「信じらんないっ!」
副社長専用の赤い革製の手帳を閉じて、溜息を付いた。