罪でいとしい、俺の君
甲斐征志郎が選んでくれたのは、さらっとしたシンプルな赤いドレス。両サイドにスリットが入ってて、何か可愛いっ!
ドレスに合わせて髪も軽くアップにして、一緒に買ってくれたヒールのあるサンダルを履く。
「やだ…ちょっとセレブちっく?」
着替えとメイクを終えてパウダールームを出ると、タキシード姿の甲斐征志郎。すっごい似合ってる…もう腹が立つくらいに。
「………」
「何よ、馬子にも衣装とか言いたいんでしょ」
「…いや…よく似合ってる……俺の見立てだからな」
「…一言多いしっ」
「フッ…夜は肩が冷える。寒かったら羽織れ」
自然な動作で黒のストールを掛けられる。やる事なす事紳士的なのに、口悪い。
膨れてるとまた笑われて、いつ買ったのかヴィトンのポーチを渡された。小物を入れてポーチを閉めると、腕を差し出される。
「さて参りましょうか?」
「お願いするわ」
腕を取り、冗談めかして答えてやった。
リアにはドレスがよく似合っていた。勿論、合うものを選んだつもりだが、自力でヘアメイクをして現れたその姿に言葉を失った……。
どんな令嬢も敵わない何にも頼らないシンプルな美…ドレスの鮮やかさにも負けない艶……ガキ扱いして抑えてきたものが今にも溢れそうになる。
会場でもリアは注目の的だった。男共の羨望と女共の嫉妬を一身に受けながら、リアは我関せず。会場の雰囲気に所在なさげにしながらも、ショーが始まるのを今か今かと待ち望んでいるようだった。
ショーにはフラ以外にもファイヤーダンスなどもあり、リアは食事と共に大いに楽しんでいるらしく、終始笑顔だった。
「楽しかったぁ♪」
「そうか」
「ディナーも美味しかったしね」
部屋に戻ってからも興奮冷めやらぬ様子でいた。何の捻りも気遣いもないシンプルな感想に、俺まで喜々としてしまう。いい年になった男が、つい最近まで女子高生だった少女の言葉一つにこんなに簡単に心動かされる。
リアには先にシャワーを浴びて着替えさせる事にした。こんなシチュエーションは腐るほど経験してきたが、相手がリアなだけで妙に落ち着かない。
「ハンガー!」
「!?」
バスルームからバスローブ姿のリアが叫びながら出てきたのには驚いた。
「皺、皺!ドレス、皺ついちゃうっ!」
バスルームの湿気に慌てたのか、ドレスの両肩を腕に吊している。クローゼットのハンガーを手渡してやると、焦ったように引っかける。
「どうせクリーニングに出すんだ。慌てる必要はないだろう?」
俺の言葉にはたと手が止まる。そうっとクローゼットに仕舞い、俺の視線から逃れるようにバスルームに戻った。気付かなくてバツが悪かったようだ。俺は噴き出して声を上げて笑ってしまっていた。
声を上げて笑うのは何年ぶりの事か……。
やはり俺の視線から逃れるように出てきたリア。入れ替わりにバスルームに入ると、リアの使うシャンプーの残り香があった。
井原…覚えてろよ!
バスルームを出ると、リアはベッドに座ったまま倒れ込んだ形で寝入っていた。はしゃぎ疲れたようで、俺は苦笑いしながらリアを抱き上げる。柔らかい髪からは残り香の比にならないほど甘い香りがする。まるで精神修行のようだ…と、井原への仕返しを考えながら、リアをベッドの半分のスペースに寝かせる。逆側のスペースに滑り込み、ベッドヘッドのリモコンでライトを絞る。穏やかに訪れる睡魔に身を任せながら、リアの寝顔を灼き付けた――。
ドレスに合わせて髪も軽くアップにして、一緒に買ってくれたヒールのあるサンダルを履く。
「やだ…ちょっとセレブちっく?」
着替えとメイクを終えてパウダールームを出ると、タキシード姿の甲斐征志郎。すっごい似合ってる…もう腹が立つくらいに。
「………」
「何よ、馬子にも衣装とか言いたいんでしょ」
「…いや…よく似合ってる……俺の見立てだからな」
「…一言多いしっ」
「フッ…夜は肩が冷える。寒かったら羽織れ」
自然な動作で黒のストールを掛けられる。やる事なす事紳士的なのに、口悪い。
膨れてるとまた笑われて、いつ買ったのかヴィトンのポーチを渡された。小物を入れてポーチを閉めると、腕を差し出される。
「さて参りましょうか?」
「お願いするわ」
腕を取り、冗談めかして答えてやった。
リアにはドレスがよく似合っていた。勿論、合うものを選んだつもりだが、自力でヘアメイクをして現れたその姿に言葉を失った……。
どんな令嬢も敵わない何にも頼らないシンプルな美…ドレスの鮮やかさにも負けない艶……ガキ扱いして抑えてきたものが今にも溢れそうになる。
会場でもリアは注目の的だった。男共の羨望と女共の嫉妬を一身に受けながら、リアは我関せず。会場の雰囲気に所在なさげにしながらも、ショーが始まるのを今か今かと待ち望んでいるようだった。
ショーにはフラ以外にもファイヤーダンスなどもあり、リアは食事と共に大いに楽しんでいるらしく、終始笑顔だった。
「楽しかったぁ♪」
「そうか」
「ディナーも美味しかったしね」
部屋に戻ってからも興奮冷めやらぬ様子でいた。何の捻りも気遣いもないシンプルな感想に、俺まで喜々としてしまう。いい年になった男が、つい最近まで女子高生だった少女の言葉一つにこんなに簡単に心動かされる。
リアには先にシャワーを浴びて着替えさせる事にした。こんなシチュエーションは腐るほど経験してきたが、相手がリアなだけで妙に落ち着かない。
「ハンガー!」
「!?」
バスルームからバスローブ姿のリアが叫びながら出てきたのには驚いた。
「皺、皺!ドレス、皺ついちゃうっ!」
バスルームの湿気に慌てたのか、ドレスの両肩を腕に吊している。クローゼットのハンガーを手渡してやると、焦ったように引っかける。
「どうせクリーニングに出すんだ。慌てる必要はないだろう?」
俺の言葉にはたと手が止まる。そうっとクローゼットに仕舞い、俺の視線から逃れるようにバスルームに戻った。気付かなくてバツが悪かったようだ。俺は噴き出して声を上げて笑ってしまっていた。
声を上げて笑うのは何年ぶりの事か……。
やはり俺の視線から逃れるように出てきたリア。入れ替わりにバスルームに入ると、リアの使うシャンプーの残り香があった。
井原…覚えてろよ!
バスルームを出ると、リアはベッドに座ったまま倒れ込んだ形で寝入っていた。はしゃぎ疲れたようで、俺は苦笑いしながらリアを抱き上げる。柔らかい髪からは残り香の比にならないほど甘い香りがする。まるで精神修行のようだ…と、井原への仕返しを考えながら、リアをベッドの半分のスペースに寝かせる。逆側のスペースに滑り込み、ベッドヘッドのリモコンでライトを絞る。穏やかに訪れる睡魔に身を任せながら、リアの寝顔を灼き付けた――。