罪でいとしい、俺の君
3
何で?
何で抱き締められて寝てるわけぇ!?
「………」
目の前には唇。少し視線を上げれば甲斐征志郎の寝顔。
私は腕枕されて、腰には腕がしっかり巻き付いてる。しかも上半身裸て…服着て寝ようよ……。
それにしてもイイ男だよね…友達に知れたら超羨ましがられる。井原さんもそうだけど三十二には見えない。見えないけどやっぱり大人の男。この年で取締役…ヤンエグってやつ?まぁ親族の会社だろうけど、帰ってくると毎日何時間も書斎に籠もりきりで、休みもよく電話が鳴ってる。
ドラマのイケメン社長とかって、形振り構わず会社に寝泊まりしたり、日付が変わった頃に帰ったりするけど、甲斐征志郎は七時過ぎには必ず帰ってくる。仕事持ち帰るのかな?たまに井原さんも一緒に書斎にいたりするし。食事は絶対うちでするし?
まだ数えるくらいしか過ごしてない日曜はデイトレードの話してくれたり、井原さんが用意してくれたDVDを一緒に観たりもした。
やっぱり…責任ってやつ?自分とこの会社が二度も私を苦しめたから……。
会社の名前に傷を付けない為の口封じに、甲斐征志郎は体よく私の世話を押しつけられたんだよね…。だってこんなイイ男なら彼女とか結婚とか…。
きっと今も彼女と間違えてるんだ…私じゃない…もっと綺麗で甲斐征志郎に似合う大人の女の人……。その人を大事にしたいから…だから家にも連れてこないで、私の事もわからないようにしてるんだ。
私に対する償いの意味があるから、会うのも我慢したりしてるのかな……?
あ……何か、ヤダ。甲斐征志郎の腕に掴まって、甲斐征志郎に優しくされてる人がいるなんて…。
ヤダヤダヤダっ!
ヤダ…よ……。
私なんか…未成年の子供で、相手にもされてないし、恋愛対象になんかなれないのくらいわかる。
わかるけど…けどヤダ…。二十歳になったら保護者とかいらなくなる…その時まで一緒に暮らしてたら?そしたら出て行かなきゃいけなくなるよね。
会う事も話す事も…あと二年近くも、私こんなの無理っ!もしいつか甲斐征志郎が奥さんになる人連れてきて一緒に住む事になったりとか、彼女紹介されたりとか…そんなのヤダっ。
ヤダ…そんなのっ。絶対ヤダ!
叶わないなら早く離れなきゃ…二十歳待てないっ。
出てけって嫌われなきゃ…ウザいめんどいって思われなきゃ。バイトもすればすぐに働けるし、お金はまたデイトレードで稼げると思う。
離れたら…沖縄とか行きたいな…このハワイの海みたいに綺麗なとこ。でも逆にハワイの事とか思い出しちゃって逆効果かも……。
甲斐征志郎の姿を見なくてもよくなるような場所に行こ。
ハワイから戻ったら少しずつ用意を始めて…夏になる前には行きたいな。
そんな事を考えてたら、また眠くなってきた……。
ベッドヘッドのデジタル時計はまだ五時前。
今だけ…今だけ独占してもいいよね?
そっと擦り寄った…規則正しい心臓の音と軽い香水の匂いは私を安心させた。
俺は夢でも見ているのか……?
俺の腕に収まってリアが寝息を立てている…あまつ俺の胸に額を擦り付けて甘えるように…。無意識なんだか俺の腕もしっかりリアの腰を抱き込んで……。
リアの髪が鼻先を擽る。寝息が肌にかかり、ゾクリと粟立つ。せめて…リアの同意でもあれば……っ。
「んぅ…」
「…っ」
身じろぐリアに躯が硬直する。
「かぃ…せ、しろ…」
「……リ、ア…」
胸に頬擦り寄せ、腕を首に絡められる。温もりが籠もって柔らかくなったリアの香りが、鼻孔に広がり脳髄を刺激した。
こんな衝動を感じた事はない。こんなに愛しいと…欲しいと、一回り以上年下の…リアに。しかもリアは被害者の娘で遺族…俺は加害者の勤務する会社の…親会社のトップ。
決して責任だの償いだのと考えている訳じゃない。申し訳ない気持ちがないと言えば嘘になる。だがそれだけでもない。俺がリアを傍にに置きたがっているから。目の、腕の届く距離に……。
名残惜しがる躯に鞭打って、俺はそっと離れた。頭を冷やす為、そのままシャワールームに向かう事にした。
冷たい水を頭から浴びて、躯の火照りに気付く。あと少しあのままいたら…俺はどうしていただろう?冷たい水でリアの感覚が消えていくのが勿体ない。
こんな機会がこの先あるとは思えない。もっと堪能すべきだったかと後悔も否めない。
リビングではすでに着替えを終えたリアが、ランドリーバスケットにバスローブやタオルを少し離れたところから放り込んで遊んでいた。
「ナイッシュー♪」
「バスケの真似事か」
「元バスケ部だも~ん」
「デイトレード研究部とやらはどうした」
「現役部員」
ハワイに発つ前に大きなヤマを当てた際、【デイトレード研究部、略してデイ研の研究成果!恐れ入ったかっ】と、満面の笑みで言っていた。リアの読みは確かに当たる。小さな外れは頻発しているが、大きなヤマは外れなく利益を上げ続けている。
「朝食はビュッフェスタイルだ」
専用ラウンジには和洋中各国の料理が並び、ビュッフェを選ばずレストランで朝食を食べる客も多いのか、ゆっくり出来た。巡回する給仕にコーヒーと紅茶をオーダーする。
リアの皿は相変わらず主食よりデザートやフルーツが多い。
何で抱き締められて寝てるわけぇ!?
「………」
目の前には唇。少し視線を上げれば甲斐征志郎の寝顔。
私は腕枕されて、腰には腕がしっかり巻き付いてる。しかも上半身裸て…服着て寝ようよ……。
それにしてもイイ男だよね…友達に知れたら超羨ましがられる。井原さんもそうだけど三十二には見えない。見えないけどやっぱり大人の男。この年で取締役…ヤンエグってやつ?まぁ親族の会社だろうけど、帰ってくると毎日何時間も書斎に籠もりきりで、休みもよく電話が鳴ってる。
ドラマのイケメン社長とかって、形振り構わず会社に寝泊まりしたり、日付が変わった頃に帰ったりするけど、甲斐征志郎は七時過ぎには必ず帰ってくる。仕事持ち帰るのかな?たまに井原さんも一緒に書斎にいたりするし。食事は絶対うちでするし?
まだ数えるくらいしか過ごしてない日曜はデイトレードの話してくれたり、井原さんが用意してくれたDVDを一緒に観たりもした。
やっぱり…責任ってやつ?自分とこの会社が二度も私を苦しめたから……。
会社の名前に傷を付けない為の口封じに、甲斐征志郎は体よく私の世話を押しつけられたんだよね…。だってこんなイイ男なら彼女とか結婚とか…。
きっと今も彼女と間違えてるんだ…私じゃない…もっと綺麗で甲斐征志郎に似合う大人の女の人……。その人を大事にしたいから…だから家にも連れてこないで、私の事もわからないようにしてるんだ。
私に対する償いの意味があるから、会うのも我慢したりしてるのかな……?
あ……何か、ヤダ。甲斐征志郎の腕に掴まって、甲斐征志郎に優しくされてる人がいるなんて…。
ヤダヤダヤダっ!
ヤダ…よ……。
私なんか…未成年の子供で、相手にもされてないし、恋愛対象になんかなれないのくらいわかる。
わかるけど…けどヤダ…。二十歳になったら保護者とかいらなくなる…その時まで一緒に暮らしてたら?そしたら出て行かなきゃいけなくなるよね。
会う事も話す事も…あと二年近くも、私こんなの無理っ!もしいつか甲斐征志郎が奥さんになる人連れてきて一緒に住む事になったりとか、彼女紹介されたりとか…そんなのヤダっ。
ヤダ…そんなのっ。絶対ヤダ!
叶わないなら早く離れなきゃ…二十歳待てないっ。
出てけって嫌われなきゃ…ウザいめんどいって思われなきゃ。バイトもすればすぐに働けるし、お金はまたデイトレードで稼げると思う。
離れたら…沖縄とか行きたいな…このハワイの海みたいに綺麗なとこ。でも逆にハワイの事とか思い出しちゃって逆効果かも……。
甲斐征志郎の姿を見なくてもよくなるような場所に行こ。
ハワイから戻ったら少しずつ用意を始めて…夏になる前には行きたいな。
そんな事を考えてたら、また眠くなってきた……。
ベッドヘッドのデジタル時計はまだ五時前。
今だけ…今だけ独占してもいいよね?
そっと擦り寄った…規則正しい心臓の音と軽い香水の匂いは私を安心させた。
俺は夢でも見ているのか……?
俺の腕に収まってリアが寝息を立てている…あまつ俺の胸に額を擦り付けて甘えるように…。無意識なんだか俺の腕もしっかりリアの腰を抱き込んで……。
リアの髪が鼻先を擽る。寝息が肌にかかり、ゾクリと粟立つ。せめて…リアの同意でもあれば……っ。
「んぅ…」
「…っ」
身じろぐリアに躯が硬直する。
「かぃ…せ、しろ…」
「……リ、ア…」
胸に頬擦り寄せ、腕を首に絡められる。温もりが籠もって柔らかくなったリアの香りが、鼻孔に広がり脳髄を刺激した。
こんな衝動を感じた事はない。こんなに愛しいと…欲しいと、一回り以上年下の…リアに。しかもリアは被害者の娘で遺族…俺は加害者の勤務する会社の…親会社のトップ。
決して責任だの償いだのと考えている訳じゃない。申し訳ない気持ちがないと言えば嘘になる。だがそれだけでもない。俺がリアを傍にに置きたがっているから。目の、腕の届く距離に……。
名残惜しがる躯に鞭打って、俺はそっと離れた。頭を冷やす為、そのままシャワールームに向かう事にした。
冷たい水を頭から浴びて、躯の火照りに気付く。あと少しあのままいたら…俺はどうしていただろう?冷たい水でリアの感覚が消えていくのが勿体ない。
こんな機会がこの先あるとは思えない。もっと堪能すべきだったかと後悔も否めない。
リビングではすでに着替えを終えたリアが、ランドリーバスケットにバスローブやタオルを少し離れたところから放り込んで遊んでいた。
「ナイッシュー♪」
「バスケの真似事か」
「元バスケ部だも~ん」
「デイトレード研究部とやらはどうした」
「現役部員」
ハワイに発つ前に大きなヤマを当てた際、【デイトレード研究部、略してデイ研の研究成果!恐れ入ったかっ】と、満面の笑みで言っていた。リアの読みは確かに当たる。小さな外れは頻発しているが、大きなヤマは外れなく利益を上げ続けている。
「朝食はビュッフェスタイルだ」
専用ラウンジには和洋中各国の料理が並び、ビュッフェを選ばずレストランで朝食を食べる客も多いのか、ゆっくり出来た。巡回する給仕にコーヒーと紅茶をオーダーする。
リアの皿は相変わらず主食よりデザートやフルーツが多い。