ただ、名前を呼んで
祖父は本当に僕を、僕の気持ちを大事にしてくれる。
歳を重ねたその腕で僕をずっと守ってくれている。
その強い腕に、その深い心に、僕は守られている。
祖父の優しく芯のある声がゆっくりと漂うロビー。
内藤さんが口を開く。
見たこともないくらい、柔らかな表情を添えて。
「さっきカスミが動揺した時、拓海君がすぐに駆け寄りましたよね。そして私をキッと睨んだ。」
内藤さんが大声で怒鳴り付けた時のことだ。
睨んでしまったこと、怒っているのだろうか?