ただ、名前を呼んで

僕がそう言うと、内藤さんはわざとらしく眉をしかめる。


「“内藤さん”は無いだろう。“おじさん”とか、そういうのにしろ。私は……君の祖父なんだから。」


内藤さんはぶっきらぼうに笑う。その隣で奥さんはクスクス笑う。

僕も笑う。
次に会った時には『おじさん』って呼んでみるよ。



内藤さん夫妻と別れ、僕は祖父と二人で家路につく。

夕暮れは気温が落ちて過ごしやすい。

僕と祖父は今夜の夕食が何か予想し合った。
なんだか幸せな、帰り道。
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