ただ、名前を呼んで
「僕じゃダメだって思い知らされる。どんなに頑張ってもさ。」
細い腕。
その腕に収められた細い足。
僕はそれらを恨めしそうに見つめる。
「なぁ拓海。」
「なに?」
顔を上げると、祖父は強気な笑顔を僕に向けていた。
「見返りを求めるばかりじゃ、強い男にはなれないぞ。」
祖父はソファーから腰を上げてキッチンの方に向かう。
祖父と祖母の話し声を遠くに聞きながら、僕はぼんやりと考えていた。