ただ、名前を呼んで
手頃な本を選びだし、貸出口で図書カードに名前を記入する。
その重たい本を持って、ジリジリと日差しが照り付ける中を歩く。
汗ばむ肌が不快だけれど、母の元に向かう僕の足取りは軽かった。
カーテンが全開なせいで惜しみなく光が流れ込む母の部屋。
ベッドの脇に座り、さっき借りた本を開く。
最近の母の具合はすこぶる良いみたいだ。
短いけど言葉は話すし、ほんのたまにだけど笑うこともある。
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