ただ、名前を呼んで

そんな母の様子が嬉しくて僕は長い時間入り浸る。

母はそんな僕の様子を気に留めることもなく、空を見たり、言葉を発したり、唄ったりして過ごしている。

母の唄う歌は、いつも決まっている。

正しくは歌とは言えないものなんだけど。


「たく、たく。」


この所母が毎日のように呟いている父の名前。

その名前を呼ぶ時の母の声が、一番弾んで聞こえる。

それで僕はいつも歌のように耳をすませいるんだ。
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