ただ、名前を呼んで

ゆっくり母に近付き、ベッドの側のパイプ椅子に腰掛ける。


「怪我しちゃった。ほら。」


僕は少し照れながら、ガーゼで保護された腕をかかげてみせた。

すると母は予想外の反応を見せたんだ。


「……お母さん?」


母は目を見開き、その細い肩を震わせていた。

怯えたような色をしたその瞳は僕を映してはいない。


「どうしたの!?怖いの!?」


母と会う時は冷静に接さなければならないって、分かっていたけど僕は慌てた。
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