ただ、名前を呼んで
「拓郎ー!!行かないで!!」
騒ぎを聞きつけた施設のスタッフが駆け付ける。
一人は取り乱している母をなだめ、もう一人は僕を部屋から出した。
「拓海くん、何があったの?」
この中年の女性スタッフは間宮さん。
彼女とはもう顔見知りで、彼女の顔を見て僕は少し落ち着けた。
「分からない…。怪我を怖がったんだ。僕の腕の怪我。」
僕はその細い腕に視線を落とし、じっと見つめる。
もしもこの腕が母を怯えさせてしまったのなら、今すぐ切り離してしまいたい。