ただ、名前を呼んで
僕はずっと母の心が戻ることを望んでいた。
今だってそれは変わらないけれど、少し胸がモヤモヤする。
だって心が戻ることが母を苦しめることになるのなら、僕には正しい答えなんて分からない。
部屋からの声は聞こえなくなっていた。母も落ち着きを取り戻したんだろう。
今日はもう帰ることにしよう。
僕だって少し混乱している。
なぜ母は僕の怪我を見て父を思い出したのか。
何をそんなに怯えているのだろうか。