ただ、名前を呼んで

帰宅するなり、僕は階段を駆け上がって祖父の部屋をノックする。

祖父が扉を開けると、部屋からは懐かしいような本の匂いがした。


「どうしたんだ?そんなに慌てて。」

「聞きたいことが、あってさ。」


真剣な僕の顔を見た祖父は僕を部屋に招き入れた。


「どうかしたか?」


僕は部屋の本棚の脇にある低いソファーに腰掛ける。


「お父さんは、どんな風に死んだの?」


開いていた窓から風が入り込み、ベージュのカーテンがなびく。

祖父は僕を見ていた。
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