ただ、名前を呼んで
『父親は自殺した』
僕が知っているのはそこまでた。
どこで、どうやって、どんな風に死んだのかは知らない。
聞くのは怖かったし、自分から避けていた部分もある。
だけど母がどんな風にその事実に直面したのか、僕は知らなければいけない気がしたんだ。
母の痛みを理解するために。
そして、父の事をもっと知るために。
祖父は部屋の奥にある木製のデスクまで歩き、備えてある椅子に座る。
「お母さんが、僕を見て怯えたんだ。」