ただ、名前を呼んで

祖父はふむ、と顎を撫でると僕を見据えた。

そうしてゆっくりと話し始めたんだ。


「拓郎は自宅で死んだんだ。カスミさんと暮らしていたアパートの部屋でな。」

「部屋で?どうやって?」


祖父は膝の上で組んだ手を解き、目の前にかざすと躊躇いがちに口を開く。


「手首を中心に腕をめちゃくちゃに切り付けたんだ。」


リストカット。

もはやそのレベルではないくらいに腕は傷だらけだったらしい。

祖父はさらに続けた。
< 145 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop