ただ、名前を呼んで
祖父はふむ、と顎を撫でると僕を見据えた。
そうしてゆっくりと話し始めたんだ。
「拓郎は自宅で死んだんだ。カスミさんと暮らしていたアパートの部屋でな。」
「部屋で?どうやって?」
祖父は膝の上で組んだ手を解き、目の前にかざすと躊躇いがちに口を開く。
「手首を中心に腕をめちゃくちゃに切り付けたんだ。」
リストカット。
もはやそのレベルではないくらいに腕は傷だらけだったらしい。
祖父はさらに続けた。