ただ、名前を呼んで

するとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。

祖父が扉を開くと、夕食の準備を終えた祖母が様子を窺いに来ていた。


「春子、お前も入りなさい。すまないが夕食は後にしよう。」


僕らの雰囲気を察したのか、祖母は何も言わずに部屋に入ってくる。

そして僕の隣に座ると、さも自然に手を握ってくれた。


「拓海。お前はこれからどうしたい?」


そう祖父に聞かれて考えてみたけれど、どうしても答えが出せない。

会いたい。
だけど会うのが怖い。
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