ただ、名前を呼んで
「怖いか?」
ドキッとした。
祖父には何でも分かるのだろうか?
僕は素直に頷いた。
「会いたいけど、お母さんが僕を見て怯えてしまうのは……辛いよ。」
声が次第に小さくなっていく。
力の無いその手を祖母の両手が温める。
「じゃあ拓海は逃げるのか?」
その言葉に反応してバッと顔を上げる。
ぶつかった視線の先にある祖父の目は、厳しい光を放っていた。
「どんな事だって起こり得るって、覚悟していたんじゃないのか?」