ただ、名前を呼んで
「僕は、どうすれば良い?」
僕が絞り出した弱々しい声が情けなく響く。
祖父はその厳しい瞳に少しだけ切なさを含ませた。
「受け止めてやりなさい。お前が本当に、守りたいと思うなら。」
強い瞳に反して、そう言った祖父の声は優しかった。
手を握る祖母の両手の温かさがじんわりとしみる。
それでもなかなか踏み出せない僕に向かって、祖父はさらにこう言った。
「カスミさんの止まっていた時計が、動き始めたんだ。」