ただ、名前を呼んで
「動き始めたものは止められないし、逃げることも出来ないんだ。拓海。」
祖父は落ち着いた、しっかりとした声でそう言った。
それはまるで僕の心に直接テレパシーで送ったみたいに、真っ直ぐに響いたんだ。
僕はこくりと小さく頷く。
「明日もお母さんに会いに行く。もしまた怖がらせてしまったら……僕が支える。」
祖父は温かく微笑んで見せた。祖母もまた、穏やかに笑う。
「さて、春子の料理が待ってる。夕食にしよう。」
祖父の言葉で、僕らはキッチンへと降りた。