ただ、名前を呼んで
鈴の鳴るような細くて高い声。
「ねぇ、パパ。知ってる子?」
声の主は、母だった。
母の声を聞いたのは初めてじゃない。
だけど何だろう?
何かが違うんだ。
「パパ?どうしたの、黙っちゃって。」
そうか……
自然なんだ。
母はあまりにも自然に言葉を発しているんだ。
夢と現の境をゆらゆらしているような不安定な言葉ではなく、確かにココに居るリアルな言葉。
母は、母の心は、戻ったのだろうか?