ただ、名前を呼んで

“ある時期”とはいつ頃なのだろうか?

じっと見つめる僕の視線に、内藤さんは困ったように顔を歪めた。

その顔は切なそうで、やるせない気持ちを滲ませていた。


「ある時期って、いつですか?」

「拓郎くんと、出会う前だと思う。」


眉を寄せて、僕から目を逸らす内藤さん。


僕の顔が父にダブったのだろうか?

それとも、父すら思い出せない母にとって僕は無に等しいと、惨めに見えたのだろうか?
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