ただ、名前を呼んで
・親子の距離
話し終えると、内藤さんは僕にいくつかの約束をさせた。
父の名前を出さないこと。
無理に記憶を引き戻そうとしないこと。
そして、僕自身の正体を明かさないこと。
それは僕にとって少し辛いことだったけれど、母を動揺させないためには仕方のない事だった。
全てを了承し、僕は再度母の部屋へと入った。
僕は自分に暗示をかける。
そこに居るのは確かに母なのだけど、母ではない。
『内藤カスミ』という一人の女性なんだと。