ただ、名前を呼んで

そんな僕の様子を気に留めることもなく、母は僕の顔をまじまじと見つめる。

次第に母の表情は曇り、苦い物を噛んだみたいに眉を寄せる。


「……ヤダ。なんか、嫌な感じがする。」


パッと顔を背けた母の瞳から、僕の姿はフェードアウトした。

実の母が初めて僕について語った言葉。

あまりにも酷くないか?

「嫌な感じがする」だなんて言われて、傷つかない訳がない。


「なんで……そんな事言うの?」


絞り出した細い声で、僕は母に問いかけた。
< 165 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop