ただ、名前を呼んで

「ごめんね……なんだか分からないけど、胸の奥がモヤモヤして……。」


母に悪気は無いんだ、きっと。
佐原拓郎の血を引く僕を、無意識に拒否しているのかもしれない。

頭では分かっていてもやっぱり堪える。

僕は次第に俯いてしまった。


「やはり、拓郎君によく似ているからな……。」


内藤さんの呟きが遠くで聞こえた気がした。
ぐらぐらと視界が揺れる。

僕は母に自分をあらわにすることも出来ず、顔を見て貰うことも出来ないのか。
< 166 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop