ただ、名前を呼んで
「ごめんね……なんだか分からないけど、胸の奥がモヤモヤして……。」
母に悪気は無いんだ、きっと。
佐原拓郎の血を引く僕を、無意識に拒否しているのかもしれない。
頭では分かっていてもやっぱり堪える。
僕は次第に俯いてしまった。
「やはり、拓郎君によく似ているからな……。」
内藤さんの呟きが遠くで聞こえた気がした。
ぐらぐらと視界が揺れる。
僕は母に自分をあらわにすることも出来ず、顔を見て貰うことも出来ないのか。