ただ、名前を呼んで

「ねぇ、ちゃんと僕を見て!お願いだから、ここに居させて!」


止まらなかった。
母を動揺させてはいけないと、頭では十分に理解しているはずなのに。

僕は母の腕を掴み、必死に訴える。母の目は明らかに動揺している。

内藤さんが母から僕を引き離そうとするけど、僕はまた振り払う。


「嫌だなんて言わないでよ!!ね?ちゃんと見てよ!!」


だめだ、やめないと。
母が怯える。
だけど制御できない。


「悲しいよ……お母さん!!」



シンと静まる、空間。
周囲の空気が凍ったのが分かった。
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