ただ、名前を呼んで

祖母が付け合わせのサラダに取り掛かっている間に、僕は祖父を呼ぶ。

祖父と祖母、それに僕が各々の席に着くと、わが家の夕食が始まる。


「じいちゃん。」

「なんだ?」


祖父はミニトマトを口に運びながら、目だけをこちらに向ける。


「今日も会いに行って来たよ。」

「そうか。」


トマトを咀嚼しながらオムライスを端から崩してゆく。
祖母は静かにゆっくりと味わっているようだ。


「今日、目が合ったんだよ!」


無意識に語尾が弾んでしまった。ごまかすためにフォークをくわえる。
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