ただ、名前を呼んで
意気消沈してしまった僕をそのままに、内藤さんは部屋の中へと戻っていった。
静かなはずのこの扉の閉まる音が、今日は重たく響くのはなぜだろう。
ぼんやりと見つめる白い壁、白い扉。
その向こうにあるのは、母を含む親子の姿。
その親子は僕と母であるはずだったのに、どうして僕はここに居るんだろう。
僕はダラダラとみっともなく涙を垂れ流し、鳴咽を飲み込みながら立ち上がる。
静かな廊下を渡り、後ろを振り返るのを必死に堪えて施設を後にした。