ただ、名前を呼んで

思わず声を荒げてしまった。

ドアの向こうでしゅんとする祖母を想像し、胸が痛む。
だけど謝る気にはなれない。

「拓ちゃん、何があったの?」


言いたくない、言えるわけない。
あまりにも辛すぎる。


「拓ちゃん?」

「うるさいな!!放っといてってば!!」


僕はドアの方に向かって強く怒鳴ってしまった。

心配してくれているんだって、ちゃんと分かっているのに。

胸の奥でざわつく感情が、どうしても抑えられない。
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