ただ、名前を呼んで
祖父はフォークをカチャンと置くと、真面目な顔をして僕を見た。
普段は温和で渋い感じの祖父の目が、僕の視線を捕らえる。
口を開いた祖父の言葉に、僕は耳を疑った。
「拓海。もうカスミさんに会うのをやめないか。」
会うのをやめるだって?
なんだよ、それ。
良くなってきた所なんだ。今、会いに行くのをやめろなんて、酷すぎるだろ。
「何でさ。嫌だよ。」
「お前が辛くなるかもしれないだろ。」
頑なな表情を見せる祖父。
祖母は柔らかい卵をフォークでふにふにとつついている。