ただ、名前を呼んで
内藤さん夫妻は、以前にも話し合いをしたロビーで待っていた。
「どうも。」
「あぁ、どうも。」
今日もやはりシンと静かなロビー。
これから始まる話し合いが重大であることを、何となく思い知らされるようだった。
母は今頃、何をしているのだろうか。
何を思っているのだろうか。
「佐原さんは、やはり施設を移動させることに反対されますか?」
重々しい空気を持ち上げて、内藤さんが口を開く。
祖父は僕の顔をちらりと見た。