ただ、名前を呼んで
祖父は両手を握ったりしながら、んん、と唸る。
「やはり、この子を思えば。」
僕はぼんやりとロビーの窓を見つめた。
こちら側からは開けられないような造りになっているけど、外はよく見える。
「たくちゃん?」
祖母が優しく声をかける。
僕はそれに答えるでもなくぽつりと呟く。
宙に泳がせる独り言みたいに。
「お母さん、どうしてる?」
泳がせた僕の独り言は、ゆらゆら泳いでみんなの頬を撫でた。