ただ、名前を呼んで
「何が辛いって言うのさ。」
「忘れたのか?カスミさんは、お前を分からないかもしれないんだぞ。」
祖父はやるせなそうに顔を歪めて僕を見る。そんな祖父を前に、僕は黙るしかなかった。
忘れてないさ。
だけどもしかしたら分かるかもしれないだろ?
大人はいつも安全圏に居ようとする。傷付くことを恐れて。
僅かでも希望があるのに、どうしてそれを信じようとしないのか。僕には分からない。
そういう意味では、僕は凄く子供らしいのかもしれない。