ただ、名前を呼んで
母は少し不思議そうな顔をした。
「私に……?」
「はい。少し、お話して良いですか?」
母が躊躇いながらも頷いてくれたので、僕は後ろ手で扉を閉めた。
平静を装うけれど、頭の中では若干の葛藤が起こる。
僕が息子であることを、明かすか明かさないか。
あまり刺激したくはない。
だけど打ち明けてしまいたい。
複雑な気持ちのまま、ベッドの上に座る母の側に近寄った。
だけど母はまたぼんやりと、視線を空に向けた。