ただ、名前を呼んで
「拓郎……。」
切なく悲しく母は呟く。
その涙は止まることを知らないみたいだった。
僕はそんな母のベッドにバタッと俯せる。
母の匂いが僕に染み渡る。
シーツに顔を伏せたまま、僕は静かに語り始める。
「ねえ?何も言わないで良いから、話を聞いていてほしいんだ。」
母に聞いて欲しいこと。
話したいこと。
多くの子供達が自分達の母親にするみたいに、当たり前に、自然に。
母は何も答えなかったけど、僕は続ける。