ただ、名前を呼んで
顔を伏せているから、母の表情は見えない。
まだ泣いているのだろうか?
また空を見ているのだろうか?
そんな事を考えていると、頭をゆっくりと撫でられた。
温かくて、柔らかい感触。
恐る恐る顔を上げてみると、母は穏やかに微笑んでいた。
前にも一度こんなことがあった。
その時も母はとても穏やかな目をしていたんだ。
あぁ、どうしよう。
堪らない。
僕は少し無理して口角を上げ、不器用に笑いかけて見せた。
僕は、母と離れる決意をした。