ただ、名前を呼んで
・空の向こう
「またね、お母さん。」
僕は自然に、何てことないみたいに、そう告げて部屋を出る。
ロビーに戻ると、祖父母が心配そうな顔でこちらを見た。
「拓海、大丈夫か?」
祖父の問いかけに頷いて、さりげなく笑顔を返す。
そして僕は視線を内藤さんに移すと、努めてハッキリと言った。
「おじさん。お母さんをよろしくお願いします。」
内藤さんは驚いたように立ち上がる。
「良いのかい?その、連れて行ってしまっても。」
僕はコクリと頷いた。