ただ、名前を呼んで
母の出発の日、空は突き抜けるように高く澄んでいた。
淡い青の中にキラキラと弾く光が眩しい。
朝食をとりにキッチンに入ると、祖父がコーヒーを片手に新聞を読んでいた。
「おはよう。」
新聞を読む祖父と朝食を用意する祖母に声をかけて席につく。
テーブルには丸皿とミルクがすでに置かれている。
「今日、行くのか?」
祖父が新聞から目を話して僕の方をちらりと見る。
僕は曖昧に笑って見せた。
母の出発は今日の正午。
僕はまだ迷っている。