ただ、名前を呼んで

自室に戻り、ベッドの上に座る。

水色のカーテンを開けて空を見上げた。

晴れた空。
風に身を任せて流れる雲を、僕はしばらく目で追った。


母は今頃どうしているだろうか。

また父を想って泣いているのだろうか。


昨日借りて来た本を膝に乗せ、めくるでもなくただ淵をなぞったりした。

ぼんやりとやり過ごす、真夏の午前。


僕は本を机に置き、何かに押されるように部屋を出た。
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