ただ、名前を呼んで
少しの時間差を置いて、フェンスの下の方でドサッと音がした。
しだいにガヤガヤとうるさくなり、悲鳴なんかも聞こえてくる。
だけど僕はそんな事に興味は無かったんだ。
落ちて行ったのは母じゃない。
母は飛んだ。
飛び立ったんだ。
父の居る、あの空の向こうへ。
父は母の心だけではなく、身体までも連れて行ってしまった。
悔しいな。
悲しいよ。
だけどお父さん。
連れて行くなら約束してよ。
もうお母さんを泣かせないって。