ただ、名前を呼んで
『じゃあ産まれてくる拓海に向けて、メッセージをどうぞ?』
父がそう言うと母は少し照れたみたいな顔をして、えーっと、と考えた。
『こんにちは、お母さんです。あなたが産まれるのをお母さんもお父さんも楽しみにしてるのよ。』
母が僕に当てたメッセージ。
守るようにお腹を抱く母が、とても温かく見える。
『早く会いたいな。大好きよ、拓海。』
そこで映像は途切れた。
砂嵐の流れる画面を前に、僕はぼたぼたと涙を零した。