ただ、名前を呼んで
僕には毎日放課後、欠かさずに通う場所がある。
そこに足しげく通うようになったのは、ちょうど小学3年生になった春からだった。
キッカケはそれよりも少し前。
言葉や感情のボキャブラリが少ないながらも、僕の中に沸き上がった自らの家庭に対しての疑問。
僕の家庭には『両親』が居なかった。
僕は物心ついた頃から祖父母の元で暮らしている。
それが当たり前だと思っていた。
しかしある時、幼児期の無垢な僕は知ってしまうんだ。